クリニックや歯科医院では、診療そのものと同じくらい「人のやりくり」に頭を悩ませている院長・事務長が少なくありません。なかでもシフト作成は、看護師・歯科衛生士・医療事務といった職種ごとに必要人数も働ける時間帯も異なり、毎月のように同じ苦労を繰り返す業務です。
「シフトは結局、自分(または特定のベテラン)が何時間もかけて手作業で組んでいる」「誰かが急に休むたびに電話をかけまくって穴埋めしている」——こうした状況は、業務システムの発注を検討する大きなきっかけになる一方で、「うちの規模で本当に必要なのか」「導入してもかえって面倒にならないか」と踏み切れない理由にもなります。
本記事では、クリニック・歯科のシフト作成という一つの課題に絞り、なぜ手作業が大変なのか、AIによる自動シフト作成で何がどこまで変わるのか、導入時に確認すべき点までを、できるだけ具体的に整理します。
なぜクリニックのシフト作成はこんなに大変なのか
クリニックのシフト作成が重いのは、職種ごとの条件・希望休・急な欠勤という複数の制約を、一人の担当者が頭の中だけで同時に解いているからです。
医療現場のシフトは、一般的なアルバイトのシフトより考慮すべき条件が多くなりがちです。クリニック・歯科で実際によく聞かれるのは、次のような事情です。
- 職種ごとに必要人数が違う: 午前は看護師2名・受付2名、午後は処置が多いので歯科衛生士を厚めに、といった時間帯ごとの配置を、複数職種ぶん同時に考える必要がある
- 希望休・固定シフトが入り組む: 子育て中で「水曜午後は固定で休み」「金曜は時短」など、スタッフごとの事情を漏れなく反映しなければならない
- 資格・スキルの制約: その時間帯に必ず特定の業務ができる人を置く、新人だけの時間帯を作らない、といった配置のルールがある
- 急な欠勤・体調不良: 当日朝に欠勤の連絡が入り、誰に声をかければ穴が埋まるかを、勤務状況を思い出しながら判断する
これらをExcelや手書きの台帳で組むと、1か月分のシフト作成に毎月まとまった時間がかかるという声は珍しくありません。しかも、作るのに時間がかかるだけでなく、「あの人の希望休を反映し忘れていた」「同じ人ばかり土曜に入っている」といった抜け漏れや不公平が生じ、後からの調整がさらに負担になります。
そして最大の問題は、この作業が「シフトを組めるあの人」に依存していることです。担当者が休んだり退職したりすると、とたんに回らなくなる——いわゆる属人化が、見えにくい経営リスクとして潜んでいます。
人手不足と働き方改革が、シフト管理の重みを増している
看護職員の採用難は統計でも裏づけられており、限られた人員を公平かつ無理なく配置することの重要性は、以前より明確に高まっています。
シフト作成が「単なる事務作業」では済まなくなっている背景には、医療現場全体の人手不足があります。厚生労働省の資料によると、看護職員(看護師・准看護師・保健師・助産師)の有効求人倍率は、全職業平均がおおむね1倍台前半で推移するなかで2倍台と高い水準が続いており、「採用が難しい職種」であることが示されています(出典:厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」 https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001140978.pdf /および同省「一般職業紹介状況」各月統計)。
人を増やしたくても簡単には増やせない以上、「今いるスタッフに、いかに無理なく・公平に働いてもらうか」がそのまま定着率や離職防止に直結します。特定の人にばかり負担が偏るシフトは、不満や離職の温床になりかねません。
加えて、医療現場では働き方改革の流れも進んでいます。2024年4月からは医師の時間外労働の上限規制が運用開始となり、勤務医については原則として年間960時間以内(地域医療確保などのため都道府県が指定した医療機関ではより高い水準)といった上限や、面接指導・勤務間インターバルの確保といった健康確保措置が制度化されました(出典:厚生労働省「医師の働き方改革」関連制度、2024年4月施行 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/topics/01.html )。この規制が直接かかるのは主に勤務医ですが、「労働時間を正確に把握し、休息を確保し、無理のない勤務計画を組む」という考え方は、看護師・歯科衛生士・事務スタッフを含むクリニック全体の勤務管理にも広がりつつあります。
つまり、シフト作成は「早く終わらせたい雑務」から、「人材定着と労務管理を支える経営業務」へと位置づけが変わってきているのです。
AIによる自動シフト作成で変わること
AI自動シフト作成は、配置ルールと希望休を入力しておけば、条件を満たすシフト案を自動で生成し、担当者は確認・微調整するだけにできる仕組みです。
よりどころベースのシフト・勤怠管理機能では、クリニック・歯科の業務フローに合わせて、おおむね次のような形で運用します。あくまで実際の運用に即した内容で、過大な効果を約束するものではありません。
条件を満たすシフト案をAIが自動生成
あらかじめ次のような条件を登録しておくことで、それらを満たすシフト案をAIが自動で作成します。
- 時間帯・曜日ごとの職種別の必要人数(午前は看護師2名、など)
- スタッフごとの希望休・固定シフト・時短などの勤務条件
- 「特定業務ができる人を必ず1名以上配置」といった配置ルール
- 土曜・祝日勤務などの偏りを抑える公平性の考慮
担当者はゼロから組む代わりに、出てきた案を確認し、現場感覚で微調整するだけで済みます。毎月の作成時間を減らせるだけでなく、希望休の反映漏れや配置ルール違反といったミスを防ぎやすくなる点が、実務上のメリットです。
急な欠勤への対応をスムーズに
当日の欠勤が出たときに、その時間帯の配置条件を満たせる候補(勤務可能で、まだ上限に達していないスタッフなど)を絞り込んで提示できます。「誰に声をかければいいか」を記憶と勘で探す状態から、候補が一覧で見える状態に変わるだけでも、穴埋めの判断は速くなります。
勤怠管理との連携で労働時間を見える化
シフト(予定)と勤怠(実績)を同じシステムで扱うことで、実際の労働時間や残業の累積を把握しやすくなります。打刻データと突き合わせることで、特定のスタッフに負担が偏っていないか、休息は確保できているかといった点を、感覚ではなくデータで確認できます。働き方改革の流れのなかで、労務管理の土台としても役立ちます。
属人化の解消
シフト作成のロジック(配置ルールや優先順位)をシステム側に持たせることで、「あの人しか組めない」状態から抜け出せます。担当者の急な不在や退職があっても、別のスタッフが同じ条件で作成を続けられるため、見えにくい経営リスクの軽減につながります。
なお、AIが作るのはあくまで「案」です。最終的な配置の責任は人が持つという前提は変わりません。AIは判断の材料と下書きを用意し、人がそれを確認・決定する——この役割分担を崩さないことが、医療現場で安心して使ううえで重要です。
問診票の転記や紹介状作成など、シフト以外の事務負担もまとめて見直したい場合は、クリニックのAI問診・書類作成で診療に集中する方法もあわせてご覧ください。クリニック向けの機能全体はクリニック・歯科向けの業務システムで紹介しています。
導入前に確認しておきたいこと
シフト機能の導入で失敗しないコツは、いきなり全部を自動化しようとせず、現状のルールを棚卸ししてから段階的に始めることです。
「導入してもかえって面倒になるのでは」という不安は、多くの場合この棚卸しを飛ばすことから生まれます。発注を検討する段階で、次の点を確認しておくと安心です。
- 現状のルールを言語化できるか: 「だいたいベテランが感覚で組んでいる」状態だと、まず配置ルールや優先順位を整理する必要があります。これは導入支援のなかで一緒に洗い出せます
- 既存の勤怠・給与の仕組みとの関係: すでに使っている勤怠打刻や給与計算がある場合、どこまで連携するか・置き換えるかを事前に決めておくと混乱を避けられます
- スモールスタートできるか: 最初は1〜2職種だけ自動化する、まずはシフトの「たたき台」生成だけ使う、といった段階導入ができると、現場が慣れながら移行できます
- 現場スタッフの巻き込み: シフトは全員に関わるため、入力方法や希望休の出し方が現場にとって無理のないものかを、早い段階で確認しておくことが定着のカギになります
よく聞かれる発注前の不安
発注を検討される方からは、次のような声をよくいただきます。いずれも、現場のクリニックでつまずきやすいポイントです。
- 「ITに詳しいスタッフがいなくても使えるのか」: シフトの入力や希望休の登録は、できるだけ普段の業務に近い操作で済むように画面を設計します。導入時には操作の手引きや初期設定の支援を行うため、ITに不慣れな受付スタッフでも運用に乗せられることを前提にしています
- 「うちの独特なルールに本当に合わせられるのか」: よりどころベースは既製のSaaSをそのまま使うのではなく、業種別パッケージをベースに必要な部分をスクラッチで追加して納品します。そのため、「午後は必ず歯科衛生士を厚めに」「特定の曜日だけ別院と人を融通する」といった、そのクリニックならではのルールにも設計段階で合わせられます
- 「導入してすぐ放置されないか」: 公開して終わりではなく、運用が始まってからの改善まで専任担当が伴走します。実際に使ってみて出てきた「ここはこうしたい」を反映しながら、現場になじむ形に育てていきます
よりどころベースは、業種ごとの業務フローに合わせてカスタマイズして納品する受託型のため、「うちのクリニックのこのルールに合わせたい」という要望に沿って設計できます。初期費用は298万円〜、最短1.5か月での公開を目安としています。決して小さくない投資ですが、人を1人増やすより前に、今いる人が消耗せず長く働ける体制を整えるという観点で検討する価値はあります。
まとめ:シフトの悩みは、仕組みで軽くできる
毎月のシフト作成に追われ、急な欠勤に振り回され、特定の人に作成が依存している——その状態は、クリニックに合った仕組みで着実に軽くできます。
シフト作成は地味な業務ですが、人手不足と働き方改革が進む医療現場では、人材の定着と労務管理を支える重要な土台です。手作業の負担を減らし、配置を公平にし、属人化を解消することは、スタッフが安心して長く働ける環境づくりにそのままつながります。
よりどころベースでは、クリニック・歯科の看護師・歯科衛生士・受付のシフト作成と勤怠管理の負担に合わせた業務システムを、貴社の業務フローに合わせて構築します。配置基準や希望休、急な欠勤対応まで、現場のルールに沿った形で設計します。まずは実際のデモ画面を15分ほどでご覧いただけます。無料相談はこちらからお気軽にお問い合わせください。