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士業事務所の相続財産調査、負担をどう減らす?所有不動産記録証明制度も解説

2026-07-21よりどころべーす編集部
士業相続相続登記所有不動産記録証明制度業務効率化

先に、要点をまとめます。

  • 相続登記義務化(2024年4月〜、過料10万円)に加え、2026年2月からは「所有不動産記録証明制度」が始まり、士業事務所が担う相続財産調査の実務が変わりつつあります
  • 財産調査で時間がかかるのは「不動産の把握」「必要書類の収集」「相続人間の情報共有」の3工程で、いずれも事務所内でのデータ管理の仕組み次第で負担が大きく変わります
  • 調査を仕組み化する場合、まず情報を一元管理する基盤を整え、そこに書類収集の進捗管理とAIによる調査補助を積み上げていくのが現実的な順序です

税理士・司法書士・行政書士が受任する相続関連業務では、「そもそも被相続人がどの不動産を持っていたか分からない」という相談が珍しくありません。名寄帳を複数の市区町村に照会し、権利証や登記簿を突き合わせ、戸籍を遡って相続人を確定させる一連の調査は、経験のある担当者の勘と根気に支えられてきました。

この記事では、相続登記義務化と所有不動産記録証明制度という2つの制度変化を踏まえたうえで、士業事務所の相続財産調査がなぜ時間がかかるのか、どこを仕組み化すれば負担を減らせるのかを整理します。あわせて、システムとして仕組み化する場合の費用感・進め方も解説します。

相続登記義務化で士業事務所の何が変わったのか?

2024年4月の相続登記義務化により、相続人は不動産取得を知った日から3年以内に登記申請する義務を負い、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。この期限管理が、司法書士・税理士事務所の新しい実務負担になっています。

相続登記はこれまで任意でしたが、所有者不明土地問題への対策として義務化されました。過去に発生した相続で未登記のままになっている不動産も対象に含まれ、施行前の相続には猶予期間(2027年3月末まで)が設けられています。この結果、士業事務所には次のような相談が増えています。

  • 数十年前に発生した相続の登記が放置されており、相続人が数十人規模に膨れ上がっているケース
  • 遺産分割協議がまとまらないまま期限が近づき、「相続人申告登記」という簡易な暫定対応を検討するケース
  • 複数の不動産が異なる市区町村にまたがっており、名寄帳の請求だけで数週間かかるケース

義務化によって「急いで調査してほしい」という依頼が増えた一方、調査そのものの手間は以前と変わっていません。むしろ期限を意識した進捗管理が新たに必要になったというのが実務上の変化です。

所有不動産記録証明制度で財産調査はどう変わる?

2026年2月に開始した所有不動産記録証明制度により、特定の被相続人が名義人となっている不動産を全国一括で照会できるようになりました。従来のように市区町村ごとに名寄帳を個別請求する手間が減り、調査のスピードが上がる可能性があります。

これまでの相続財産調査では、被相続人が生前に不動産を所有していた可能性のある市区町村すべてに名寄帳の交付を請求し、回答を待つ必要がありました。遠方に土地を持っていた場合や、本籍地と居住地が異なる場合は、どこに照会をかけるべきか自体を戸籍から推測する作業が発生します。

所有不動産記録証明制度は、法務局が保有する登記記録を名寄せし、特定の個人が名義人となっている不動産の一覧を証明書として発行する制度です。ただし次の点には注意が必要です。

  • 証明の対象は登記記録に基づくため、旧字体表記や住所変更履歴によっては完全に名寄せされない不動産が残る可能性がある
  • 制度開始(2026年2月2日)より前に発生した相続であっても利用できるが、あくまで登記記録がベースであり、未登記不動産や私道の共有持分などは別途調査が必要
  • 相続人申告登記や遺産分割協議書の作成に必要な「不動産の網羅性」は上がるが、権利関係の精査(抵当権・地役権の有無など)までは代替しない

制度を使えば調査の出発点が早く整うようになりますが、そこから先の「必要書類を集める」「相続人全員の同意を取り付ける」という工程は従来どおり事務所側の実務です。ここが、士業事務所の相続業務でシステム化の効果が最も出やすい部分になります。

相続財産調査で時間がかかるのはどの工程か?

不動産の網羅的な把握・必要書類の収集状況の管理・相続人間の情報共有の3工程が、多くの事務所で時間を取られるポイントです。

1. 不動産の網羅的な把握

前述の所有不動産記録証明制度でスピードは上がるものの、証明書が届いたあとに「この土地は本当に対象か」「共有持分だけ載っている土地はないか」を1件ずつ確認する作業は残ります。担当者が案件ごとに紙やExcelで不動産リストを作り直していると、同種の案件でも毎回ゼロから整理することになります。

2. 必要書類の収集状況の管理

相続登記や相続税申告には、戸籍謄本一式、固定資産評価証明書、遺産分割協議書、印鑑証明書など、案件ごとに異なる組み合わせの書類が必要です。「どの書類が揃っていて、どれが不足しているか」を担当者の記憶やメールの履歴で追っていると、相続人への催促漏れや提出直前の慌てた収集が起きやすくなります。

3. 相続人間の情報共有

相続人が複数いる案件では、それぞれに進捗を個別に電話・郵送で伝える手間がかかります。「誰にいつ何を伝えたか」が担当者の記憶に依存していると、同じ説明を繰り返したり、逆に伝達漏れでクレームに発展したりすることがあります。

こうした工程は、専門家の判断そのものではなく「判断の前提となる情報を揃え、進捗を管理する」作業です。ここをシステムで支えることで、相続人への説明や複雑な権利関係の整理といった、専門知識が必要な業務に時間を充てやすくなります。

士業事務所の相続財産調査における不動産把握・書類収集管理・相続人情報共有の3工程を中心のハブから3方向に伸びるカード形式で示した図解。中心は「相続案件の進捗管理基盤」とし、AIが専門家の判断を代替せず調査の前提整理を効率化する位置づけを表現している。士業事務所の相続財産調査における不動産把握・書類収集管理・相続人情報共有の3工程を中心のハブから3方向に伸びるカード形式で示した図解。中心は「相続案件の進捗管理基盤」とし、AIが専門家の判断を代替せず調査の前提整理を効率化する位置づけを表現している。

相続業務をシステムで仕組み化する場合の費用感とステップは?

業務システムとして構築する場合、案件・書類の進捗管理を中心にした構成で300万円前後、AIによる書類ドラフト作成まで含めると450万円前後が目安です。

士業事務所が相続業務のデジタル化を検討する場合、案件管理システムを単体で契約する方法と、顧問先管理・書類作成・相続案件管理までを1つの基盤にまとめる方法があります。単体契約は導入が早い一方、通常業務の顧問先情報と相続案件の情報が別システムに分かれ、同じ顧問先の相続相談を受けたときに情報を行き来させる手間が生じがちです。

業務システムとして構築する場合の費用レンジは、機能範囲によって次のように分かれます。

  • 案件・書類進捗管理を中心にした構成: 300万円前後。相続人マスタ・不動産マスタ・書類チェックリスト・期日リマインドが対象
  • AI書類ドラフト生成や相続人向けポータルまで含めた構成: 450万円前後。遺産分割協議書のひな形作成、相続人がオンラインで進捗確認できる画面などが加わる
  • AIナレッジbotの高機能版やカスタムダッシュボードまで含めた構成: 750万円前後。事務所全体の案件横断分析、専任担当のサポートが付くことが多い

保守運用費は月額数万円〜10万円程度が目安で、法改正への追従や画面の細かな調整に対応できる体制を確保しておくと安心です。

導入までの流れは、おおむね次のステップで進みます。

  • 要件整理(2〜4週間): どの案件から着手するか、現状の書類チェックの方法や相続人への連絡フローを洗い出す
  • 基本設計(2〜4週間): 相続人マスタ・不動産マスタ・書類テンプレートの構造を設計する
  • 開発・テスト(1〜2ヶ月): 実際の案件データで動作確認しながら調整する
  • 運用開始・定着支援: 現場の使い方に応じてチェックリストやリマインド設定を微調整する

要件整理から公開まで最短1.5ヶ月程度で立ち上げることも可能です。まずは相続案件の書類進捗管理という一点から始め、効果を確認しながらAI機能を積み増していくアプローチが、事務所内の合意も得やすい進め方です。

私たちなら相続案件の進捗管理基盤をこう設計する

ここまでの整理を踏まえ、相続案件の進捗管理を実際にシステムとして形にするなら、という前提で設計の考え方を具体的に書き下ろします。

データ設計: 相続人マスタ・不動産マスタ・案件マスタを軸に、被相続人ごとの案件IDに、相続人の続柄・連絡先、対象不動産(所有不動産記録証明書の内容を取り込む想定)、必要書類とその収集状況(戸籍謄本・固定資産評価証明書・遺産分割協議書など)、相続登記の期限日をすべて紐づけて1つの基盤に集約します。従来は案件ごとに紙のチェックリストやExcelで管理していた「誰から何をもらったか」を、案件IDを軸に一覧で追える状態に置き換えるのが最初の工程です。

情報の流れ: 担当者が相続人から書類を受け取った時点でシステムに登録すると、書類チェックリストの該当項目が自動で「収集済み」に更新されます。所内の管理者は、案件ごとの進捗率と登記期限までの残り日数をダッシュボードで一覧でき、期限が近い案件から優先的に着手すべきかが一目で分かります。相続人への進捗共有は、システム上の最新状態をもとに定型フォーマットで送付できるようにし、担当者が毎回状況を思い出しながら文面を作る手間をなくします。

AIの回答設計: 社内AIチャットは、案件マスタと書類収集状況のデータを根拠に回答します。たとえば担当者が「A様の案件で、まだ集まっていない書類は何ですか」と尋ねると、AIは該当案件の書類チェックリストを参照し、「A様の案件では、遺産分割協議書と一部の相続人の印鑑証明書が未収集です。登記期限まで残り45日です」と、根拠となる案件データに基づいて回答します。回答は必ず登録済みのデータに基づかせ、AIが書類の内容や法的な要件そのものを推測で判断しないように設計するのが前提です。

権限・運用ルール: 担当者は自分が受任している案件の相続人情報・書類収集状況を登録・編集できる一方、案件の完了処理や相続人情報の削除は所長・管理者権限に限定します。書類の収集状況は所内の関係者全員が閲覧できるようにし、「誰が何をいつまでに集めるべきか」が個人の引き出しやメールではなく画面上で共有される状態を作ります。担当者が異動・退職した場合でも、案件情報が個人に紐づかず引き継げる状態を最初から前提にします。

既存環境との連携・移行: 既存の顧問先管理システムや会計ソフトをすでに使っている場合、それらを置き換えるのではなく、相続案件という新しいマスタを追加し、顧問先IDで紐づける形の連携を想定します。過去の案件をすべて移行するのではなく、現在進行中の案件と、これから受任する新規案件から新しい仕組みに載せていく段階移行が現実的です。

以下は、こうした設計思想をもとに構築した、よりどころべーすの士業事務所向けデモ画面(サンプルデータ)です。

よりどころべーすの士業事務所向けダッシュボードのデモ画面(サンプルデータ)。案件別の書類収集進捗バー、登記期限までの残り日数アラート、相続人ごとの連絡履歴、AIによる未収集書類の一覧提示が1画面にまとまっている。よりどころべーすの士業事務所向けダッシュボードのデモ画面(サンプルデータ)。案件別の書類収集進捗バー、登記期限までの残り日数アラート、相続人ごとの連絡履歴、AIによる未収集書類の一覧提示が1画面にまとまっている。

上の画像はサンプルデータによるデモ画面で、実際の顧客データや事務所の導入実績を示すものではありません。案件ごとの書類収集の進捗バー、登記期限までの残り日数アラート、相続人ごとの連絡履歴、AIによる未収集書類の提示が1つの画面にまとまっているイメージを掴んでいただくためのものです。担当者がこの画面を開けば、自分が抱える案件のうちどれを優先すべきかが一目で分かる、という状態を目指した設計です。

定着の仕掛け: 担当者にとって「書類が届いたらシステムに入力する」以上の追加作業が発生すると定着しません。書類を受け取った時点での登録だけでチェックリストと期限アラートが自動で更新される設計にし、進捗共有の文面作成やリマインドのタイミング管理といった「忘れないようにする」負担そのものをシステム側に移す設計を心がけます。

こうした設計は、既製の案件管理SaaSでは書類の種類や進捗のステータスがあらかじめ決まった型になっており、事務所ごとに異なる相続人への説明フォーマットや、所内の権限ルールまでは踏み込めないことが多いのが実情です。かといって、ゼロからのフル自作は費用も期間もかかりすぎて、多くの事務所にとって現実的ではありません。私たちは、業種別パッケージを土台にしながら、貴事務所の書類チェックの仕方や相続人への連絡ルールに合わせてスクラッチで作り込む形をとることで、この間を埋めます。エンジニアが直接ヒアリングするため、営業と開発の間で要件が伝言ゲームのように変質することもなく、現場が迷わず使えるUIを最優先に設計します。最短1.5ヶ月ほどで公開できるため、まずは相続案件の書類進捗管理という一点から始め、効果を確かめながら他の業務へ広げていく進め方も無理なく実現できます。

まずは、直近に受任した相続案件のうち「書類が揃うまでに何往復のやり取りがあったか」を1件だけ振り返ってみてください。そこに、仕組み化で削れる時間のヒントが見えてくるはずです。ここに書いた設計はあくまで一般化した叩き台であり、実際には貴事務所の案件の傾向や書類チェックのルールに合わせて、要件整理の段階から一緒に詰めていくことになります。サービスの全体像は士業事務所向けの業務システムのページにまとめていますので、あわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 所有不動産記録証明制度を使えば、名寄帳の請求は不要になりますか?

A. 完全には不要になりません。証明制度は登記記録をもとに全国の不動産を一覧化するものですが、未登記の不動産や、旧字体・住所変更履歴により名寄せが完全でない不動産が残る可能性があります。網羅性を高める一次情報として活用しつつ、必要に応じて従来の名寄帳請求も併用するのが実務上安全です。

Q. 相続案件の管理システムは、通常の顧問先管理システムと別に用意すべきですか?

A. 別システムにする必要はありません。むしろ同じ顧問先の相続相談を受けるケースもあるため、顧問先マスタと相続案件マスタを同じ基盤上でIDで紐づけて管理するほうが、情報の行き来がスムーズです。

Q. 小規模な事務所でも導入する意味はありますか?

A. 相続案件を年間で複数件並行して扱っており、書類の催促や進捗確認に多くの時間が取られているなら、規模にかかわらず検討の価値があります。相続案件が年に数件程度であれば、Excelでの管理で十分なこともあります。

Q. 導入にはどのくらいの期間がかかりますか?

A. 要件整理から書類チェックリストのテンプレート設計、テスト運用を経て本格運用に入るまで、標準的には1.5〜2ヶ月程度です。進行中の案件を無理に載せ替えず、新規受任案件から新しい運用を始めるのが安全です。

Q. 効果はどうやって測ればよいですか?

A. 導入前に「1案件あたりの書類収集にかかった往復回数」「相続人への進捗連絡にかかった時間」を1ヶ月分記録しておき、導入後に同じ指標で比べるのが確実です。数字で比べられる状態を作ってから導入すると、所内の合意も得やすくなります。

書類作成やナレッジ共有まで含めた事務所全体のDXについては、士業事務所のDX|書類作成とナレッジ共有をAIで変えるもあわせてご覧ください。ご相談はお問い合わせフォームから承っています。

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