「先月見積を出したお風呂の件、その後どうなった?」と聞かれて、担当の営業がスマホのメモを探し始める。返事を待っているのか、こちらから連絡する約束だったのか、他社に決まったのかが、本人にしか分からない——チラシやホームページの問い合わせから受注するリフォーム会社では、よくある場面です。
先に、要点をまとめます。
- 反響から受注までのうち、案件が止まりやすいのは見積提出のあとで、原因の多くは「次にいつ、誰が、何をするか」が記録に残っていないこと
- 段階は「問い合わせ」「現地調査」「見積提出」のような作業名より、「次の約束が入っているか」で区切ると数えられる
- 失注は理由を5〜6種類のコードで残すと、価格・提案・対応速度のどこを直すべきかが月単位で見えてくる
- 追客の記録を、現地調査の記録・見積の版・完工後のアフターフォローと同じ顧客台帳につなぐと、営業の引き継ぎや再提案にも使える
この記事は、反響型のリフォーム会社で営業を管理している社長・営業責任者の方に向けて、追客と失注の記録を何で回すかを整理します。訪問営業(飛び込み)の手法や、広告の集客方法は扱いません。
リフォームの追客で、案件はどこで止まるのか?
多くは見積提出のあとです。お客様の検討中に会社側の次の連絡が決まっておらず、担当者の記憶とスマホのメモだけで追っていると、連絡の間隔が空いたまま他社に決まります。
反響型のリフォーム営業は、おおむね「問い合わせ → 初回の連絡 → 現地調査 → プラン・見積の提出 → 再提案・調整 → 契約」の順に進みます。問い合わせから現地調査までは、お客様が日時を決めるので記録に残りやすい段階です。現地調査の日程が決まれば、カレンダーに入るからです。
止まりやすいのは見積提出の後です。お客様は家族と相談したり、他社の見積と比べたりしていて、会社側からは状況が見えません。ここで「来週の土曜に奥様にも見ていただいてから、こちらから電話します」といった次の約束が記録に残っていないと、担当者が忙しい週に連絡が抜けます。担当者が退職したり、現場管理に回ったりした場合は、見積を出したお客様の一覧そのものが分からなくなります。
見積の作り方そのものを揃えたい場合はリフォーム会社の見積作成を標準化する方法で、見積の前提になる現地調査の記録はリフォーム会社の現地調査・採寸記録を標準化する方法で解説しています。この記事では、見積を出した後の追客と、受注できなかったときの記録に絞ります。
追客の段階は、どう区切れば数えられるのか?
作業名で区切るより、「次の約束が入っているか」「お客様が何を決める段階か」で区切ると、止まっている案件を数えられます。
段階を「現調済み」「見積済み」のような作業の完了で区切ると、見積を出した瞬間から何週間たっても「見積済み」のままになり、動いている案件と止まっている案件の区別がつきません。次のように、段階ごとに「入る条件」と「次の行動の期限」を決めておくと、期限を過ぎた案件を一覧で拾えます。
| 段階 | 入る条件(事実で判定) | 次の行動と期限の例 |
|---|---|---|
| 受付 | 問い合わせを受けた | 当日〜翌営業日に初回の連絡 |
| 現調予約 | 現地調査の日時が決まった | 現調日の前日に確認の連絡 |
| 提案準備 | 現地調査が終わった | 見積の提出日を決め、お客様に伝える |
| 検討中 | 見積を提出し、次の連絡日を約束した | 約束した日に連絡。約束がなければ提出から1週間以内に確認 |
| 調整中 | 仕様・金額・工期の変更を相談している | 修正見積の提出日 |
| 契約 | 請負契約を結んだ | 着工準備へ引き継ぎ |
| 失注 | お客様から断りの連絡があった、または一定期間連絡が取れない | 失注理由を記録して終了。時期延期は再連絡日を設定 |
表の期限は一例です。給湯器の交換のように急ぎの工事と、全面改装のように数か月かけて検討する工事とでは、適切な間隔が違います。工事の種類ごとに期限を変えられるようにしておくと、営業担当が「この件はまだ連絡しなくていい」と判断した理由も残せます。
失注の理由は、どう分ければ打ち手につながるのか?
理由を自由記述だけにせず、5〜6種類のコードと自由記述の組み合わせで残します。月ごとにコード別の件数を見ると、価格・提案・対応速度のどこを直すかが分かります。
自由記述だけの失注メモは、1件ずつ読めば事情が分かりますが、月に何十件も集まると傾向が読めません。次のようなコードに分けておくと集計できます。
| 失注理由のコード | 判定の目安 | 見直す対象 |
|---|---|---|
| 価格で他社に決定 | 他社の見積額が理由と聞けた | 見積の内訳の見せ方、仕様の松竹梅 |
| 提案内容で他社に決定 | 他社の仕様・プランが理由と聞けた | 現地調査の聞き取り、提案の幅 |
| 時期の延期・計画中止 | 「今年はやめておく」などの回答 | 失注ではなく再連絡日を設定 |
| 予算・ローンが合わない | 予算を超えた、借入ができなかった | 予算の確認を現調時に前倒しする |
| 連絡が途絶えた | 一定回数・期間連絡が取れない | 見積提出後の連絡間隔、初回対応の速さ |
| 対応できない工事 | 自社の対応範囲外、職人の手配がつかない | 受付時の聞き取り項目 |
断りの理由を、お客様がはっきり話してくれるとは限りません。分からない場合は「不明」として残し、無理に推測のコードを付けないほうが集計の精度が保てます。
コード別の件数が出ると、打ち手を選べます。たとえば「連絡が途絶えた」が多いなら、見積提出後の連絡間隔を見直します。「価格で他社に決定」が多くても、同じ月に「提案内容で他社に決定」がほとんどないなら、仕様を落とした案を併記する見積の出し方を試す、といった具合です。粗利の側から見積を点検する考え方はリフォーム会社の粗利管理・実行予算で扱っています。
Excel・既製の顧客管理ツール・案件管理ソフトの違いは?
段階と失注理由を数えるだけなら、Excelや既製の顧客管理ツールで始められます。現地調査の記録や見積の版、着工後の工程・アフターフォローと同じ顧客台帳でつなぎたい場合に、作り込みを検討します。
| 方式 | 費用の目安 | 向いている範囲 |
|---|---|---|
| Excel・スプレッドシート | 低コスト | 営業が数名で、案件数が月数十件までなら回る。期限の通知は手作業 |
| 汎用の顧客管理(CRM・SFA)ツール | 月額数千円〜(ユーザー数で変動) | 段階管理と次回連絡のリマインド。現調・見積・工事の情報は別管理になりがち |
| リフォーム・工務店向けの案件管理ソフト | 月額数万円〜 | 見積・工程・原価まで一通り。段階や失注理由の持ち方は製品ごとに異なる |
| カスタム開発 | 初期298万円〜(よりどころべーすの場合) | 自社の段階定義・失注コード・見積の版を、顧客台帳と工事の記録につなげて作り込む |
営業が2〜3名なら、まず上の2つの表を列にしたスプレッドシートで1〜2か月記録してみると、自社でどの段階に案件がたまるかが分かります。それが分かってから道具を選ぶほうが、使わない機能に費用をかけずに済みます。カスタム開発の場合、ライトプランが初期298万円〜、フルプランが450万円、プレミアムプランが750万円(いずれも税別)、保守は月額10万円〜で、最短1.5ヶ月で公開できます。
導入でつまずきやすいのはどこか?
入力項目を増やしすぎることと、次の連絡日を必須にしないことです。
- 項目を増やしすぎる: 家族構成や築年数、趣味まで最初から入力欄にすると、営業担当の入力が追いつきません。最初は「段階」「次の行動と期限」「失注理由」の3つに絞ります
- 次の連絡日が空欄でも保存できる: 検討中の案件に次の連絡日がないと、止まっている案件を一覧で拾えません。検討中の段階では必須にします
- 失注を記録しない: 受注した案件だけ登録して、失注は消してしまう運用では、理由の集計ができません
- 営業と現場で台帳が分かれる: 契約後に工事担当へ引き継ぐ時点で別の表に移すと、現地調査で聞いた要望や見積の経緯が現場に届きません
私たちならリフォーム会社の追客・失注管理をこう設計する
ここまでは、追客と失注の記録の一般論を整理してきました。ここからは、私たちが反響型のリフォーム会社から営業管理の仕組みづくりを受託するとしたら、どう設計するかを書き下ろします。段階の数や項目は工事の種類・営業体制・集客の経路で変わるため、ここでは骨組みだけを示します。
データ設計: 顧客台帳×案件×接触履歴×見積の版を「案件ID」で束ねる
土台は「顧客台帳」「案件」「接触履歴」の3つです。顧客台帳は世帯単位で、住所・建物の種類・築年数・過去の工事履歴を持たせます。同じお客様から浴室と外壁の相談が別々に来ることがあるので、案件は工事の種類ごとに1件とし、問い合わせの経路(チラシ・ホームページ・紹介・過去のお客様など)、段階、担当者、次の行動と期限を持たせます。接触履歴には、電話・訪問・メールのたびに日時・内容・お客様の反応を残します。案件の配下には現地調査の記録と見積の版をぶら下げ、失注時には理由のコードと自由記述、時期延期なら再連絡日を記録します。契約した案件はそのまま工事の記録に引き継ぎ、完工後のアフターフォローの起点にします。
情報の流れ: 事務が受け付け、営業が追い、営業責任者が止まった案件を拾う
問い合わせを受けた事務担当が顧客と案件を登録し、担当営業を割り当てます。営業担当は、現地調査や見積提出のたびに段階を進め、そのつど次の行動と期限を入れます。見積を提出したら、提出日と次の連絡日を入れるまで段階を「検討中」に進められない順番にします。営業責任者は、週に一度、期限を過ぎた案件と、2週間以上接触のない検討中の案件を一覧で確認し、担当者と次の手を相談します。社長は月に一度、問い合わせの経路別・工事の種類別に、受注と失注理由の件数を見ます。
AIの回答設計: 止まっている案件と、失注の傾向を会話で引き出す
社内AIチャットから案件と接触履歴を引けるようにすると、営業会議の前に一覧表を作る手間が減ります。たとえば営業責任者が「見積を出してから2週間以上連絡していない浴室の案件を出して」と尋ねたとします。AIは案件の段階と接触履歴を照合し、「該当は4件です。うち2件は次の連絡日が空欄のままで、1件は約束した連絡日を5日過ぎています。残る1件はお客様から『来月に家族で決める』と聞いた記録があり、再連絡日が来月10日に設定されています。各案件の最終接触の内容と、提出した見積の版を表示します」と、元の記録を添えて答えます。
社長が「この半年で、価格を理由に他社に決まった案件は、どの工事の種類に多いですか」と聞けば、失注コードと工事の種類で集計し、該当案件の見積額と、お客様から聞けた他社の条件のメモを並べます。AIの役割は記録を探して並べるところまでで、値付けや提案を変えるかの判断は社長と営業責任者が行います。
権限・運用ルール: 個人情報は利用目的の範囲で使い、見られる人を絞る
問い合わせで受け取る氏名・住所・電話番号は個人情報です。個人情報保護法21条では、個人情報を取得したときは、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに利用目的を本人に通知するか公表することが求められています(個人情報の保護に関する法律|e-Gov法令検索)。問い合わせフォームや受付の案内で示した利用目的を案件にも記録し、その範囲で追客に使います。顧客台帳の閲覧は営業・事務・工事担当に限り、失注した案件の再連絡は、お客様から断りの意思を聞いた場合は行わない旨をフラグで残します。
既存環境との連携・移行: 見積ソフトはそのまま使う
見積書をすでに見積ソフトやExcelのひな形で作っている場合は、見積の作成はそのまま続け、提出した見積のファイルと金額・提出日を案件に登録する形から始めます。過去の案件は無理に移さず、新しい問い合わせから記録を始め、過去のお客様の一覧だけを顧客台帳に取り込みます。
定着の仕掛け: 期限が来た案件だけを朝に知らせる
営業担当の画面の最初に、今日が期限の案件と、期限を過ぎた案件だけを表示します。全件の一覧を見に行かなくても、その日に連絡すべきお客様が分かる状態にすると、入力した次の連絡日が使われていることを担当者自身が実感でき、入力が続きやすくなります。
よりどころべーすのリフォーム会社向けダッシュボードのデモ画面(サンプルデータ)。進行案件・今月着工・顧客満足度のKPIカード、月次推移のグラフ、施工写真撮影や完工報告書作成、顧客アンケート送付などの直近タスクが並び、左のメニューに案件管理・施工写真管理・顧客フォロー・ワークフローがある。
上の画面は、よりどころべーすのリフォーム会社向けダッシュボードのデモ画面(サンプルデータ)です。進行案件や今月着工のKPIカードと担当者別のタスクが表示され、メニューから案件管理・顧客フォロー・ワークフローを開けます。KPIの数値や担当者名はデモ用のサンプルです。追客の段階や失注理由の集計画面は、このデモには入っていません。実際の構築では、この「案件×顧客フォロー×タスク」の骨格の上に、上で書いた段階の定義と失注コードを載せて作り込みます。
追客の記録を、現地調査・見積の版・工事・アフターフォローと同じ顧客台帳につなぐ部分は、顧客管理ツールと案件管理ソフトを別々に入れると、営業から工事への引き継ぎの場面で切れやすいところです。よりどころべーすでは、リフォーム向けパッケージにある案件管理や顧客フォローの上に、貴社の段階の定義と失注のコードをスクラッチで追加できます。仕様を決めるときは、エンジニアが営業責任者から「週の会議でどの案件の話をしているか」を直接聞き取ります。この設計は出発点なので、工事の種類と営業の人数を伺いながら、要件の整理から一緒に進めます。
まずは、先月見積を提出した案件を書き出し、それぞれに「次にいつ、誰が連絡するか」が決まっているかを確かめてみてください。決まっていない案件の数が、追客の仕組みを見直す目安になります。ご相談はお問い合わせフォームから承っています。
まとめ|見積を出した後の「次の約束」を記録に残す
記事のポイントを3つにまとめます。
- 反響型のリフォーム営業で案件が止まりやすいのは見積提出の後。段階を「次の約束が入っているか」で区切ると、止まった案件を数えられる
- 失注は5〜6種類のコードと自由記述で残し、月ごとに件数を見ると、価格・提案・対応速度のどこを直すかが分かる
- 追客の記録は、現地調査・見積・工事・アフターフォローと同じ顧客台帳につなぐと、引き継ぎと再提案に使える
案件管理全体の考え方はリフォーム業の案件管理・見積作成をAIで効率化する方法で、完工後のお客様との関係づくりはリフォーム完工後のアフターフォローを自動化する方法で解説しています。リフォーム会社向けの業務システムの全体像は、リフォーム業向けAI業務システムの詳細で紹介しています。
よくある質問
Q. 追客の連絡は、見積提出後どのくらいの間隔で行えばよいですか?
A. 工事の種類とお客様の検討状況によって変わります。給湯器の交換のような急ぎの工事と、全面改装のように数か月かけて検討する工事では、適切な間隔が違います。見積提出時にお客様と次の連絡日を約束し、約束がない場合の確認期限だけを社内で決めておく方法が運用しやすいです。
Q. 失注の理由はお客様に聞いてもよいのでしょうか?
A. 断りの連絡を受けたときに、差し支えのない範囲で「今後の参考に」と尋ねる方法があります。答えたくない様子であれば無理に聞かず、理由は「不明」として記録します。推測でコードを付けないほうが集計の精度を保てます。
Q. 時期の延期は失注として扱うべきですか?
A. 「今年はやめておく」といった時期の延期は、失注と分けて扱い、再連絡日を設定しておくことをおすすめします。失注に含めてしまうと、価格や提案が理由の失注と混ざり、打ち手を選ぶ材料になりません。
Q. 営業が2〜3名の会社でも仕組み化は必要ですか?
A. 案件数が月数十件までで、営業同士が日々顔を合わせているなら、スプレッドシートで段階・次の行動・失注理由の3つを記録するところから始められます。営業の入れ替わりがある、工事担当への引き継ぎで情報が抜ける、といった問題が出てきたら仕組み化を検討する目安です。
Q. 問い合わせのお客様の情報を追客に使うとき、注意することはありますか?
A. 個人情報保護法21条により、個人情報を取得したときは、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに利用目的を本人に通知するか公表する必要があります。問い合わせフォームや受付で示した利用目的の範囲で使い、断りの意思を示したお客様への連絡は控えるよう記録に残しておきます。
